電力自由化の流れが始まったのは、2011年に起きた東日本大震災が、きっかけだと言われています。2011年3月以降は、従来のエネルギー事情に対し「より安全で、公平な立場の電力供給が必要」と考えられるようになりました。
ここでは、2011年以降の電力自由化の流れとともに、2016年の4月から「何が変わるのか」説明したいと思います。
震災をきっかけに、国民の「エネルギーに対する意識」が変わった
電力自由化が始まるきっかけになったのは、2011年3月11日に起きた、東日本大震災でした。福島第一原子力発電所の事故を通して「より安全なエネルギー」が、国民の間で求められるようになりました。
また、震災を通して直面したのは「電力不足」の問題でした。節約の必要性はもちろんですが、病院などの医療機関や公共施設で電力が停まるのは、大変危険なことです。
こうした(電力不足の)事態にならないよう、再生可能エネルギーの開発と導入が、急ピッチで進められるようになりました。また、旧い制度を見直し、新しい「電力をとりまく環境」が再構築されています。
実は、大規模工場やオフィスビルに対しては、既に「電力自由化」が導入されていました。また、中規模のビルや商業施設に対しても、2004年〜2005年の時期に電力自由化が、導入されていたのです。
2016年からは、一般家庭や低圧の電気を利用する世帯に対して、電力の小売り自由化(通称:電力自由化)がスタートします。電線を流れる電流は同じですが、契約をする相手は、それぞれの家庭によって違ってきます。
例えば、ある事業者はクリーンエネルギーをメインに、発電所を所有し、契約者に配電するかもしれません。また、別の事業者は火力発電で、契約者に電気を届けることでしょう。
流れる電気は目に見えませんが、発電の方法や各企業の環境に対する取り組みは、全く異なっています。中には「エネルギーの地産地消」を目指し、自治体や地域密着型の企業が発電を行い、配電するケースもあるでしょう。
私たちは「自分が使いたい」と思える事業者や「取り組みに共感できる」企業と契約が結べます。電力自由化と言えば、価格やサービスの面が重視されがちですが、最も大きなメリットは「自分の考えに合う事業者と契約を結べる」点です。
これからは、お金の面だけでなく、人や環境、地球にやさしいエネルギーの導入が望まれています。クリーンで環境に配慮した電力は、これからも発展し続けることでしょう。
国が目指すのは「安定供給・電気代の抑制・自由度の高いシステム」の3つ
国が、電力自由化で目指しているのは、以下の3点(3つのシステム)です。ここでは、2013年4月に閣議設定された内容を分かりやすく、まとめてみました。
項目 | 内容 |
---|---|
① 安定供給を確保すること | 災害やなんらかの問題が起こった場合でも、常に「電力供給」が継続できるよう、安定した電力源と電力供給の確保を構築したい。 |
② 電気料金を抑制すること | 企業間の競争を促し、電気料金が抑制(安くなるよう)を目指す。 |
③ 自由度の高い電力システムを確立すること | 従来のシステムを無くし、どの事業者も自由に「電力の小売事業」に参入できるよう、ビジネスの土壌を作る。 |
①〜③の目標を実現するため、実際に実施される改革が、電力の自由化です。
電力自由化のほかにも「広域的運用推進機関」と呼ばれる機関が設立されました。広域的運用推進機関とは、緊急時の電力を全国規模で調整し、電力が安定供給できるようにする機関です。
また「発送電分離」の取り組みも、着々と進められています。発送電分離とは、発電部門を電力会社と切り離し、別会社にする取り組みを指します。発送電分離が開始されると、どの事業者も平等に、同電線が使えるようになります。
発送電分離がスタートするのは、2018年〜2020年頃と言われています。ただし、発送電分離は、手続きや(安定供給の)整備に時間がかかるため、正確な時期については、未だはっきりしていません。
東京電力のように、2016年から事業所を分ける企業もありますが、他のエリアを見る限り、全国規模のスタートまでには、数年の時間をかける必要があります。
メモ:発送電分離は「安定供給のため」利用エリアが限られている
電力自由化では、広範囲での小売り事業が可能になりました。しかし、発送電分離については、公平性を維持するため「地域独占型」で、送配電事業が継続されます。
まとめ: 環境と地域、人にやさしいエネルギーが、求められる時代
電力自由化がスタートしますが、電気料金の面だけで無く、環境や地域、人にやさしいエネルギー需要が、年々高まってきています。これからは、決められた企業ではなく、自分で事業者を選べるようになります。
電力自由化をきっかけに「今後利用するエネルギーや環境問題」について、見つめなおす機会を持ちましょう。