日本でも電力自由化がスタートしますが、海外ではいち早く、電力自由化がスタートしています。例えばアメリカでは、1990年代より電力自由化が導入されています。また(日本に先駆け)他国でも、電力自由化を実現した国は多いです。
ここでは、 海外の例を参考に、電力自由化にまつわるトラブルと解決策について、取り上げてみたいと思います。
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海外は、既に「電力自由化」をしている国が多い
日本では、2016年4月より電力自由化が始まりますが、アメリカをはじめ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ノルウェー、フィンランド、スペイン、デンマークの国々では、既に「電力自由化」が実現しています。
また、同じアジアでは、中国、韓国も電力自由化を実施しています。
ただし、どの国も「小売の自由化」を実現したのではなく、国や州によっては、発電部門のみ自由化を認めたり、一部「試験的に」自由化を実現したケースも多く、一律ではありません。
国名 | 自由化が実施された年 |
---|---|
アメリカ | 1992年 |
イギリス | 1993年 |
ドイツ | 1996年 |
フランス | 2000年 |
イタリア | 1999年 |
スペイン | 2000年 |
ノルウェー | 1991年 |
スウェーデン | 1996年 |
フィンランド | 1997年 |
デンマーク | 2005年 |
韓国 | 2001年 |
中国 | 2002年 |
このように世界では、さまざまな国が「電力自由化」を実施し、今もなお自由化の道を歩んでいます。
次項では(各国を代表して)アメリカ、イギリス、アジア(韓国と中国)の電力事情について、簡単に説明したいと思います。
アメリカの電力自由化は、1992年よりスタート!
アメリカでは、1992年に全米の電力自由化がスタートしました。また、1996年には、発送電分離(送電と発電部門の機能を分離させること)を導入しています。
この結果、アメリカでの電力自由化競争は激化し、価格の安い電力プランが、数多く出回るようになりました。
アメリカと日本の電気代を比べると、アメリカの方が「電気代はかなり安い」と言えます。もちろん、同じアメリカでも州によって、平均の電気代は大きく異なります。また、一軒家とアパートでは、電気代の仕組みや料金体系は変わってくるでしょう。
例えば、大きな一軒家の場合、月3万円〜4万円支払う家庭もアメリカには存在します。しかし、平均的な一般家庭の電気代は「日本の約半分」と考えて間違いありません。
特に、北米(アメリカ・カナダなど)の電気代は、世界の中でも非常に安く、低価格で利用できるのは(他国民にとって)大きな魅力です。
アメリカは、州毎に法律が異なる
アメリカは州毎に法律が異なり、電力供給の体制も異なります。州単位で電力自由化が始まりましたが、カリフォルニア州のように途中で、小売の価格競争を禁止した州や、ニューメキシコ州、オクラホマ州のように、電力自由化を廃止した(導入の見送り)を行った州も存在します。
このため、同じアメリカでも州によって、電力自由化に対する考え方や制度は、大きく異なります。また、企業や工場等の大口需要家に対しては、部分的に「電力自由化」を認める州もあり、アメリカ国内の制度は(日本のように)一定ではありません。
アメリカで多発した、停電の問題
「アメリカの停電問題」は、日本でも新聞やニュースで取り上げられたため、多くの方が、既にご存じのことでしょう。
2000年の夏頃、カリフォルニア州では停電が相次ぐようになりました。また、2003年には、北アメリカ(アメリカ北東部とカナダの一部)で、大規模な停電が発生しました。
その後2006年には、ニューヨークを中心としたエリアで10日間もの大停電が発生しています。停電が発生したのは、電力自由化の整備が追いつかず「十分な電力が確保できなかった」のが原因です。
また、電力自由化だけでなく、再生可能エネルギーが天候などの影響を受け、余剰電力が確保できなかったこと、そのほか、ITブームなどの影響で、消費電力が一気に増えたことなど(停電の)原因は、複数あります。
イギリスの電力自由化は、1990年からスタート
イギリスの電力自由化は、1990年にスタートしました。イギリスは(先進国の中でも)もともと、公共料金の高い国でしたが、国営の電力会社の分割、民営化を経て1999年に電力の「完全自由化」が導入されました。
ただし、イギリスの電力自由化は「完全な自由化制度」ではありません。
実際は「一部の電力会社」が、90%近いシェアを独占しており、事業者間の格差は大きいです。また、電気代は一時的に下がったものの、しばらくして価格は上昇しており(イギリス電力自由化の)、ここ数年の「社会問題」と化しています。
イギリスでも「セット割」を利用する家庭が多い
イギリスでは、ガス会社と電力会社のセット割が人気で、大半のイギリス国民は、ガスと電気を組み合わせて契約を行っています。また、プランの組み合わせを考えるのが複雑なため、日本のような比較サイトや「電力専門サイト」の仕組みも発達しています。
イギリスの電力自由化は、転換期を迎えている…!
このように、イギリスでは「自由化」が導入されたものの、消費者の負担は(ほとんど)変わっていません。私たちは、イギリスと同じ島国です。
過去の取り組みを教訓に、電力自由化の仕組みや導入方法について、真剣に考える必要があるでしょう。
アジアの電力自由化|韓国・中国の導入例を見て、参考にしてみよう
最後に、同じアジアの国から「韓国と中国の自由化」について説明しましょう。
韓国の電力自由化は「発電部門」のみ、小売は自由化なし
韓国では、もともと、国営企業のKEPCO(韓国電力公社)が電力事業を独占していました。しかし、2001年には発電部門の「電力自由化」が認められ、新しい法制度がスタートされました。
ただし、韓国の自由化は発電部門だけです。小売に関しては、KEPCOの独占状態が続いており、日本とは違った仕組みを採用しています。
(日本でもそうですが)発電事業への参入は、新しい企業にとってハードルが高いのが現状です。このため(発電事業において)既存の事業者と、対抗できる企業は、ほとんどありません。
中国の電力自由化は、段階的にスタート|本格導入は、先になる模様
中国の電力自由化は、2002年にスタートしています(電力体制改革)。しかし、日本のように「全国一斉に実施」された訳ではなく、一部の省で、試験的に導入されたに過ぎません。
いくつかの省で、自由化の取り組みが見られましたが、現在は導入をストップした地域や、制度の見直しをする省も多いです。このため、本格的な電力自由化の導入は、まだまだ先になると予想されています。
国土の広い中国では、電力の需要も高く「国民にいかに安定した電力を供給するか」が、大きな課題となっています。
また、大気汚染などの問題も深刻です。今後は、再生可能エネルギーの導入や、安全でクリーンなエネルギーの導入が、各国から期待されています。
各国の取り組みを見て、分かったこと|日本は「イギリス式」に近い?
日本国内にも、再生可能エネルギーを導入したベンチャー企業、自社で発電を行う小さな企業がたくさんあります。
しかし、実質的には「大手の独占状態になるだろう」と、専門家の予想が立てられています。大手の独占とは、既存の電力会社だけでなく、ガス会社や燃油系、その複数の大手企業が合併した「新しい電力事業者」を意味します。
日本は、今後「イギリスに近い状況」を迎えるでしょう。しかし、より品質の良い電力を確保し、電気代がさらに安くなるよう「イギリスと違った路線」で、改革を進める必要があります。
それには「一部の企業が独占状態にならないよう」補助金政策や、さまざまな事業サポートを、国主導で行う必要があるでしょう。
今後、電力自由化を検討している世界の国々|シンガポールなど
世界では「電力自由化」の流れが続いていきます。近いところでは、シンガポールが電力自由化(2018年)を予定しています。シンガポールと言えば「アジアで最も、経済発展した国」のひとつです。
電力消費量の多いシンガポールで、どのような自由化対策が行われるのか、アジアはもとより、世界からも大きな注目が集まっています。
まとめ:電力自由化は、各国のメリット・デメリットを参考にすべき!
「電力自由化」の流れは、世界各国で取り入れられています。日本は、海外の状況をお手本にし、私たちの生活がより豊かで、快適になるよう「電力自由化を導入する」必要があります。
日本国内で「良い例」が示せれば、今後、他国にも「良い影響」が与えられることでしょう。